【令和8年1月義務化】工作物石綿事前調査者
【令和8年1月義務化】工作物石綿事前調査者とは?新たな資格制度を徹底解説
はじめに
令和8年(2026年)1月1日から、工作物の解体・改修工事において新たな資格制度が始まります。それが「工作物石綿事前調査者」です。この資格は、産業設備や配管などの工作物からアスベスト(石綿)を適切に発見し、安全な作業を確保するために創設された重要な資格です。
工作物石綿事前調査者とは?
資格の概要
工作物石綿事前調査者は、建築物以外の構造物である「工作物」において、石綿含有材料の有無を調査するための専門資格です。従来は建築物の石綿調査に関する資格制度はありましたが、プラント設備や配管などの工作物については資格要件がありませんでした。
なぜこの資格が必要なのか?
アスベストは肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こすことが判明し、2006年9月以降は使用が全面禁止されています。しかし、それ以前に建設された工作物にはアスベストが使用されている可能性が高く、解体・改修時に適切な調査を行わなければ、作業者や周辺住民に健康被害をもたらす危険性があります。
工作物は建築物とは構造や石綿含有材料が異なるため、専門的な知識が必要となります。そのため、工作物に特化した調査者の資格制度が新設されることになりました。
資格で出来ること
工作物石綿事前調査者の資格を取得すると、以下の業務を行うことができます,
主な調査対象工作物
特定工作物(工作物石綿事前調査者のみが調査可能)
- 炉設備: 反応槽、加熱炉、ボイラー・圧力容器、焼却設備
- 電気設備: 発電設備、配電設備、変電設備、送電設備
- 配管及び貯蔵設備: 各種配管、貯蔵タンクなど
その他の工作物(建築物石綿含有建材調査者も調査可能)
- エレベーター、エスカレーター
- コンクリート擁壁
- 電柱
- 公園遊具
- 鳥居
- 仮設構造物
- 遊戯施設 など
具体的な業務内容
- 図面調査: 工作物の設計図書や仕様書を基にした石綿使用の可能性調査
- 現場調査: 実際の工作物における目視調査と試料採取
- 調査報告書作成: 調査結果をまとめた報告書の作成
- 石綿含有材料の特定: 工作物特有の石綿含有建材の識別
施行時期
令和8年1月1日以降着工の工事から、工作物の解体等の作業を行うときは、資格者による事前調査を行う必要があります。
なお、令和8年1月1日以前に着工する工事についても、資格者による事前調査を行うことが推奨されています。
対象となる人
受講資格
工作物石綿事前調査者講習を受講するためには、特定の要件を満たす必要があります。一般的に以下のような方が対象となります:
- 建設業、解体業に従事する技術者
- 環境コンサルタント
- 建築士、施工管理技士などの建設関連資格保有者
- アスベスト調査・除去業務に従事する者
- 工作物の設計・施工・保守に関わる技術者
どのような方に必要か?
- 解体業者: 工作物の解体工事を行う事業者
- 建設業者: 工作物の改修工事を行う事業者
- 設備メンテナンス業者: プラント設備の保守点検を行う業者
- 環境調査業者: アスベスト調査を専門とする業者
- 建築設計者: 工作物の設計に関わる建築士・設計者
資格取得方法
講習内容
基礎知識が2時間、図面調査が4時間、現場調査の実際と留意点が4時間、調査報告書の作成が1時間のトータル11時間のプログラムで構成されています。
カリキュラム構成
- 基礎知識(2時間): 石綿の基礎知識、法規制、健康影響など
- 図面調査(4時間): 設計図書の読み方、石綿使用箇所の特定方法
- 現場調査(4時間): 実際の調査手法、安全対策、試料採取方法
- 調査報告書作成(1時間): 報告書の作成方法、記載すべき内容
講習機関
建築物石綿含有建材調査者講習等登録規程(平成30年厚生労働省・国土交通省・環境省告示第1号)に基づき、都道府県労働局に登録された機関(登録講習機関)で受講できます。
修了試験
講義終了後の筆記試験に合格した方には、『工作物石綿事前調査者』の修了証明書が付与されます。
資格の重要性と今後の展望
社会的意義
この資格制度の創設により、工作物の解体・改修工事における石綿対策がより確実なものとなり、作業者の健康被害防止と環境保全に大きく貢献することが期待されます。
業界への影響
工作物を取り扱う建設業界、解体業界、設備保守業界などでは、この資格を持つ技術者の需要が急速に高まることが予想されます。特に、プラント設備を多く扱う化学工業、電力業界などでは必須の資格となるでしょう。
まとめ
工作物石綿事前調査者は、令和8年1月1日から義務化される重要な資格です。工作物特有の石綿含有材料に関する専門知識を身につけることで、安全で適切な解体・改修工事の実現に貢献できます。
対象となる業界で働く方や、これから関連分野への転職を考えている方は、早めの資格取得を検討することをお勧めします。講習は登録機関で受講でき、11時間のカリキュラムと修了試験を経て資格を取得することができます。
石綿による健康被害を防ぐためにも、この新しい資格制度を理解し、適切な調査体制を整えることが、私たち一人ひとりの責務といえるでしょう。
事前調査に資格が必要な工作物をご確認ください。